地域の皆様へ
令和元年4月1日
山陰労災病院院長
豐島 良太
鳥取県では、平成30年4月に保健医療計画の見直しが行われました。その中で、「疾病・課題別医療提供体制の構築」があげられています。
「疾病別・課題別」とは、5疾病((がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)と6事業(小児医療、周産期医療、救急医療、災害医療、へき地医療、在宅医療)のことです。
鳥取県保健医療計画において、山陰労災病院は、特にがん対策とへき地医療の役割を担うこととされています。
疾 病 別 ・ 課 題 別 医 療 提 供 体 制 の 構 築
疾 病 又 は 事 業 別 対 策(5疾病6事業対策)
- 5疾病
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- がん対策
- 脳卒中対策
- 心筋梗塞等の心血管疾患
- 糖尿病対策
- 精神疾患対策
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- 6事業
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- 小児医療
- 周産期医療
- 救急医療
- 災害医療
- へき地医療
- 在宅医療
5疾病
1.がん対策
死因の1位であるがんについて、死亡率が全国並みとなるよう予防・早期発見、がん拠点病院を中心とした医療提供体制の充実や在宅療養支援など、総合的ながん対策を行っていく。
- 主な対策・目標
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- がん対策推進計画における全体目標を達成させるため、がんの予防、早期発見、緩和ケアを含むがん医療の向上、患者支援など、総合的ながん対策を推進。
- がん健診や肝炎ウィルス検査の受診率の向上。
- 受動喫煙防止対策の強化。
- 職域のがん健診におけるピロリ菌検査等との併用検査を実施など、働きざかりの世代のがん死亡を減少させる取組を行う。
- がん健診について、1次健診受診率70%以上とし、市町村がん健診の精密検査受診率を95%以上とする。
2.脳卒中対策
県内における主要な死亡原因であるこの疾病に対し、予防のための生活習慣病対策を進めるとともに、急性期から回復期・維持期、在宅までの医療連携体制の整備、充実等を図る。
圏域における医療機関の役割分担、医療機能の集約化により、高度・先進的な医療が提供できる体制を整備する。
- 主な対策・目標
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- 特定健診・特定保健指導の徹底と受診率・実施率を高めるための環境づくりを進める。
- 県東部では病棟の建替が行われる県立中央病院に脳卒中センターが設置される予定。中部・西部においても中核的な医療機関を定め、地域の医療機関との連携体制を構築する。
- 急性期医療機関の脳卒中患者に対応する脳卒中専門医、脳血管内治療専門医等のスタッフの充実等を図り、t-PA治療、脳血管内治療の実施体制が確保されるよう、医療機関の連携、機能分化を進める。
3.急性心筋梗塞
「急性心筋梗塞対策」を「心筋梗塞等の心血管疾患対策」に見直し、心不全等の合併症等を含めた医療提供体制の構築を進める。
禁煙対策や生活習慣病対策による発症予防を進めるとともに、発症後、早期かつ適切に医療を受けられるよう、応急手当・病院前救護の取組を充実させる。
- 主な対策・目標
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- 市町村、産業界、専門職団体、関係機関等と共同した、メタボリックシンドロームの対策や生活習慣病予防の重要性の普及啓発。
- 特定健診・特定保健指導の徹底と受診率・実施率を高めるための環境づくり。
- 各圏域において心血管疾患リハビリテーションの提供体制の充実を図るとともに、慢性心不全等の再発防止のため、退院後の患者へのリハビリテーション体制も充実させる。
4.糖尿病対策
適切な食生活と運動習慣によって糖尿病の発症を予防するとともに、特定健診受診率向上による早期発見、適切な治療による重症化予防及び医療提供体制の充実・強化を進める。
健康マイレージ等の推進により、地域や職域において健康づくりに取り組む環境を整備する。
- 主な対策・目標
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- 特定健診・特定保健指導の徹底と受診率・実施率を高めるための環境づくりに取り組む。
- 健康マイレージの推進による地域や職域における健康づくりやデータヘルスの指針に取り組む。
- 糖尿病医療連携登録医制度により、県民が安心してかかりつけ医療機関で糖尿病の初期治療が受けられる体制整備の推進。
5.精神疾患対策
精神疾患患者の早期発見・早期治療、入院患者の地域生活への移行など、地域で適切な医療を受けられる体制づくりを進めていく。
統合失調症、うつ病、認知症、発達障がい、依存症、てんかん、高次脳機能障がいといった多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制の構築を進めていく。
- 主な対策・目標
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- 長期入院患者の地域移行・地域定着支援に携わる専門職員の育成。
- 認知症の人の日常医療をかかりつけ医が担えるよう、認知症対応力の向上を図るとともに、認知症サポート医を養成する。
- 看護師等の医療従事者の認知症対応力が向上するよう研修を実施する
- 鳥取県アルコール健康障害推進計画に沿った発生予防、進行予防、再発予防の各段階に応じた取組を実施する。
6事業
1.小児医療(小児救急含む)
夜間や休日に病気になったり、けがをした小児がスムーズに適切な医療を受けられるよう、医療提供体制を充実させる。
救急医療機関への適正受診、かかりつけ医の必要性について住民への普及啓発活動を継続する。
- 主な対策・目標
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- 全国共通ダイヤルで看護師や小児科医師からアドバイスを受けられる「小児救急電話相談事業」を実施する。
- 小児医療に従事する医師の確保策の推進。
- 医療的ケアが必要な重症障がい児等が、地域で療養・療育できるよう、訪問診療、訪問看護等の医療体制の充実や医療・介護・福祉サービスの相互連携による支援体制を整備、強化する。
2.周産期医療
いざという場合でも妊婦や新生児がスムーズに適切な医療機関に搬送され、安心・安全な妊娠、出産ができる医療提供体制の整備を進める。
災害時に妊産婦・新生児等へ対応できる体制の構築を進めるため、災害医療コーディネーターを設置する。
- 主な対策・目標
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- 市町村を含めた妊娠・出産に関する相談窓口の周知と、相談等をワンストップで受け付け、適切な機関に繋げる体制の整備を全市町村において進める。
- 産科の拠点となる病院に搬送コーディネーターの配置を検討する。
- 災害時小児周産期リエゾンを養成し、災害医療コーディネーターに委嘱する。
3.救急医療
疾病発生時に患者が速やかに医療機関へ搬送され、適切な医療を受けられる体制をつくる。
鳥取県単独のドクターヘリを運航することにより、搬送時間を短縮し、救命率の向上及び重症かつ後遺症有りの者の発生率の減少を図る。
- 主な対策・目標
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- 県民に、救急医療の実態に対する理解を深め、医療機関の適正受診の促進や、かかりつけ医の必要性を認識してもらうため、必要な広報活動を実施する。
- 県民が急な病気やけがをしたときの対応の相談窓口として、専門家から電話でアドバイスを受けることができる電話相談事業の実施を検討する。
- 急性期を脱した患者を受け入れる医療機関や介護施設等と、救急医療機関との連携の強化を図るための具体的な対策を検討する。
- 鳥取大学医学部附属病院を基地病院とする鳥取県ドクターヘリの運航により搬送時間を短縮し、救命率の向上及び重症かつ後遺症有りの者の発生率の減少を図る。
4.災害医療
大規模災害(地震、津波など)等の発生により被災地で多数の傷病者が生じた場合、県外搬送や救護班の派遣など適切な対応がスムーズに行われる体制づくりを進める。
鳥取県中部地震の際には、被災市町村が設置・運営する避難所情報の集約・連携といった課題が見えてきたため、被災市町村との効果的な連携体制づくりを進める。
- 主な対策・目標
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- 被災地域の医療ニーズ等の情報収集及び各種医療チームとの連絡調整等を行う災害医療コーディネート体制の整備を進める。
- 災害拠点病院以外の病院並びに分娩及び透析を担う診療所のBCP策定を促進させる。
- 避難所を設置する被災市町村との効果的な連携体制づくりに関する取組を進める。
5.へき地医療
県内のどこに住んでいても必要な医療を受けられる医療提供体制づくりを進める。
へき地における医療従事者の確保やチーム医療の充実については、「へき地保健医療計画」を「医療計画」に一本化した上で、医療計画における医療従事者の確保等の取組と連動して進める。
- 主な対策・目標
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- へき地医療拠点病院について、主たる事業である巡回診療、医師派遣、代診医派遣の取組が向上するよう、そのあり方について検討を進める。
- 医療機関への遠隔医療システムの導入を進める。
- 日野病院内に鳥取大学地域医療総合教育研修センターを設置して、学生時代から地域医療を経験する取組を進める。
6.在宅医療
治療や療養を必要とする患者が、通院困難な状態にあっても居宅等の生活の場で必要な医療を受けられるように、医師等医療従事者や介護職員等が居宅等を訪問して看取りまで含めた医療を提供できる体制(希望すれば在宅で療養できる医療提供体制)の確立を目指す。
地域医療構想や介護保険事業計画と整合性のとれた、実効的な整備目標を設定し、在宅医療の提供体制を着実に整備する。
- 主な対策・目標
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- 各地区医師会に設置された在宅医療連携拠点が中心となり、訪問診療に取り組む医療機関等の支援を行う。
- 在宅医療PR映像を作成し、県内で行われている在宅医療の取組や、各地域で受けることのできる訪問診療、訪問看護等のサービス等の情報発信を行う。
- 県民に人生の最終段階における医療・介護について話し合うことの重要性についての啓発活動を行うとともに、看取りを含めて在宅医療に取り組む医療機関を増やす取組を進める。